湯浅誠さん・西野博之さん対談記録vol.6【居場所のちから~大丈夫のタネをまこう】

「学校ムリでもここあるよ」オープニングイベント
居場所のちから ~大丈夫のタネをまこう湯浅誠さん・西野博之さんの対談記録を連載形式でお届けします。

*開催日:2020年8月22日(土)
*会 場:お茶の水エデュケーションプラザ(EDUPULA)
*主 催:NPO法人フリースクール全国ネットワーク、NPO法人 日本冒険遊び場づくり協会、FUTURE DESIGN(多様な学びプロジェクト)、NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
ゲストスピーカー:
社会活動家/東京大学先端科学技術研究センター特任教授/全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長・湯浅誠さん

NPO法人フリースペースたまりば理事長/川崎市子ども夢パーク所長・フリースペースえん代表・西野博之さん

本イベントは全てYouTubeで公開しています!


第1話 「生きづらさ」は、「気遣われない辛さ」

第2話 大人の肯定的なまなざしが、「大丈夫」になる

第3話 失敗しても伝えやすい社会へ

第4話 居場所でどんな力が育ってる?

第5話 自分の物差しを疑うということ

真面目な子ほど昼夜逆転になる

生駒 親御さんからの質問で、「居場所さえも行けない、昼夜逆転ゲーム依存、引きこもりのこどもが一歩外に出られる声かけがあれば教えて下さい」。

西野 本人が快適に引きこもっているのであれば……。大事なのは、その状況がいつまでも続くわけではないということ。昼夜逆転だって僕は意味がある時間だと思っていて、全部ダメじゃない。真面目な子ほど昼夜逆転になる。
こどもたちは「朝起きれない身体」を作り出すことで、苦しい状況にいる自分を諦められる。これすごい力だと思うんですよね。

西野博之さん

本人が苦しいのかどうか。今その子の状態を家族が受け入れられなければ、「まだ起きてこない」ということが問題になる。
摂食障害の子で、死にたいと思っていたときに「過食」を手に入れて、それで死を考えないですむ時間を手に入れた、という子がいる。過食にもすごい意味があったんですよね。
だから、ダメという目線から離れる。社会に出ていなくても受けとめられる社会になっていればね。否定的に見るのではなく、今を生きているその子自身をそのまんま見るようにする。

湯浅 大前提として居場所に来れない人はいる。居場所は全てに対応できるわけではないので。アウトリーチで関わることは必要だと思う。

そういう関わり方をしてくれる第三者がいれば、あとできればその子以上にそのゲームに習熟していればなおいいよね。「こいつすげー!」みたいな。そういうナナメの人が関わること、「寅さん理論」というかね。よくわからないおっさんだと親にも話せないことを話せる。そういう関わり方ができる場所を探してもらえればね。

西野 無理やり子どもを家から引き出そうとする、暴力的な引き出し屋に引っかからないこともね。オンラインで入っていくというかたちが急速にこれからの社会に広がると思っている。Zoomで「やあ」っていうね。

湯浅 繋がりすぎない場所ですよね。

生駒 たしかに、雑談が緊張するっていう人もいますよね。

西野 やることがあったほうがいいですけどね。「自由にして」と言われるのがつらいという人だっている。

生駒 ナナメの関係はこどもにも親御さんにもどちらにも寄り添ってくれるというか、そういう人が地域にいっぱいいると親も子も生きやすいんだろうな、と思いました。

 見逃してはいけないサインは?

生駒 質問の中でもう一点。「休校の中で学校に行けなくなった、行こうと頑張りすぎて自傷をしてしまう。見逃してはいけないこどものサインとか、言ってはいけない言葉とかはありますか?」。

西野 いっぱいあるよね。食欲がないとか、体に異変が出ているというのは「基本のキ」だけど。いじめが疑われるときに、携帯を見る頻度が減ったとかね。

生駒 あんまり言いすぎても、うちの子こうかも、って心配になりますからね。

湯浅 なんでそんなに行きたがるか、ですよね。休むと友達に会えないから、とか、親から何か言われちゃうとか、何でだろうね。

西野 「0か100か」タイプの人もいますよね。出席日数とか成績が完璧じゃなければ気が済まないとか。

湯浅 そうですよね。やっぱり聞いてみることかなあ。それが親がいいかは別問題ですけど。

西野 学校が、本当に安心・安全で、楽しく過ごせる環境ならば行きたい子はたくさんいるよね。このコロナで余計に不安はあるし。休んじゃいけないっていう圧はまだまだ日本社会にあると思うですよね。

湯浅 勝手には決め付けられないから、聞くしかないんじゃないかな。

生駒 先ほどの話であった前向きな好奇心を持って、というのですね。

西野 聞き出そうとする感じだと喋れないよね。家庭の中でその空気感をどう作れるかかな。そんなに命を削ってまで、お母さんは行ってほしくないよ、とか……。

「関わらないと分からない」から、好意的な好奇心を持つ

湯浅 人って一年間3000万秒生きているんですよ。10歳の子って3億秒生きてるです。3億秒の一秒一秒は、誰も体験したことないことなんですよね。オンリーワンっていうのは目指すものではなくて、既になっているものなんですよ。だから、民主主義というか、一人一票なんですよ。それで社会を作っているので。

湯浅誠さん

ということからくるのが、「なんであんたそう思うの?」なんですよ。好意的な好奇心を持つ、というのは、善人だからではなく、関わらないと分からない、というのが前提にあるんですよね。

西野 大学で教えていたときに、ある女の子が「親に迷惑をかけるから死なないけど、消えてなくなりたい」って言ったんですよ。それが、その場に居合わせた多くの友だちから支持された。若者たちの中に蔓延している「消えてなくなりたい」と思う社会から、どういう社会にしていくか。

生駒 「気持ちがわかります」というコメントが来ていますね。昼夜逆転や過食も「生きたい」って気持ちで辛いんだよ、ってことかもしれないですね。

(第7回に続く)

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